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更新日 : 2025年10月15日

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すぎなみビト 音楽家 谷川 賢作

音と言葉が響き合う楽しいジャズの調べ。
作曲家であり、ジャズピアニストとしても活躍する谷川賢作さん。数々の映画やテレビ作品などの音楽を手掛け、各地での演奏活動も積極的に行っています。地元で開催される阿佐谷ジャズストリートヘの出演は今年で5回目。音楽人生、父・谷川俊太郎さんとの活動、ジャズストリートヘの思いなどを伺いました。
(撮影協力=久遠キリスト教会)

目次

ステージを見て、音楽の面白さ・詩の面白さをたくさん発見してほしい♪

プロフィール画像

プロフィール:谷川賢作(たにかわ・けんさく)
昭和35年杉並区生まれ。ジャズピアノを佐藤允彦氏に師事。80年代半ばより作・編曲の仕事を始め、数々の映画およびテレビ作品などの音楽を手掛ける。日本アカデミー賞優秀音楽賞を複数回受賞。演奏家としては、現代詩を歌うバンド「DiVa」、ハーモニカ奏者・続木力とのユニット「パリャーソ」、父である詩人の谷川俊太郎と朗読と音楽のコンサートを全国各地で開催。現在も各地で多様な演奏活動を展開中。阿佐谷ジャズストリートには令和3年から4人組ユニット「もこもこ」で出演している。

小学1年生で始めたピアノ。音楽家の道へ進むまで

谷川さんの子ども時代のお話、音楽活動の原点を聞かせてください。

蝶よ花よと育てられた一人っ子の父と、下町、三河島の6人兄弟の末っ子である母という、いわば全く正反対の環境で生きてきた両親のもとに、長男として生まれました。実家は阿佐谷で、杉並第二小学校に通いました。子どもの頃はどちらかというと引っ込み思案で、寡黙な少年だったように思います。
音楽を始めたのは小学1年生。兄弟の多い家庭に育ち、習い事をしたことがなかった母が、おそらく息子に夢を託す気持ちもあったのでしょう。「向いているからやってみなさいよ」と僕にピアノを勧めてくれたのが、音楽を始めたきっかけです。


5歳ごろの谷川さんと家族(父・母・妹)

ピアノを習い始めて、どのように感じましたか?

メカニックな基礎練習がすごく嫌でした。手の甲に5円玉を置いて落ちないように弾くとかね。それでも音楽を奏でること自体は好きで、アニメソングなんかを耳コピしながら自由に弾く時間はとても楽しかったです。でもその後、母への反発から「クラシックはもうやりたくない」とピアノをやめて、中学生時代は完全にブランク。高校生になって友達とロックバンドを組むとき、「ピアノをやっていたから谷川はキーボード!」と言われてまた弾くようになりました。ディープ・パープルの曲をたくさんコピーしていましたね。

ジャズピアニストの道を志した背景にはどんな思いがあったのでしょうか?

高校を卒業した後、大学に行かず何もしないでいた時期があって。親はそんな息子を受け止めてうるさいことを言わなかったけれど、僕は僕なりに「このままじゃいかんな」と感じていて、いろいろ考える中でもう少し音楽を勉強したいという考えに行き着きました。音楽を学べる大学の入試要項も取り寄せてみたけれど、「バッハのここを弾かなければならない」とか、受験項目がなんとなくしっくりこない。それならばと、ジャズピアノを学べる学校の扉を叩き、ジャズピアニストである佐藤允彦さんに師事することになりました。

クラシックやロックを経て、本格的に学んだのがジャズだったのですね。

ジャズの世界に飛び込んで、最初こそ「暗くて妙な音楽だな」と思いましたが、理論を理解し謎が解けていくと面白くて、どんどんハマっていきましたね。カラオケがまだなかった当時はクラブでの歌伴奏の需要が高く、赤坂・銀座のジャズクラブでたくさん弾きました。その経験でずいぶん鍛えられたと思います。同時に、お店で出会ういろいろな人に声をかけてもらい、ちょっとしたアレンジからラジオCMの作曲など音楽の仕事をするようにもなりました。そして初めて本格的に取り組んだ大きな仕事が、市川崑監督の映画「鹿鳴館」の音楽。25歳のときです。共同クレジットで作曲家の山本純之介さんと音楽を担当し、勉強させてもらった思い出深い作品です。その後、市川監督の多くの作品で音楽を担当するようになりました。

自然と変化してきた音楽活動。父・谷川俊太郎との思い出

長く音楽の仕事をしてきた中で、音楽との向き合い方に変化はありますか?

20代~30代は映画音楽をはじめ、CM・PR映像の作曲の仕事を数えきれないほどやりました。生演奏を録音するのではなくパソコンを使って曲を作る、いわゆるデスクトップ・ミュージックの波が来ていて、僕もどんどん新しい機材を取り入れました。ピーク時には1曲丸ごとパソコンで作ったんじゃないかな。その頃は演奏活動をほとんどしていません。でも徐々にそういった作曲から離れて、50歳ごろには機材を全部片付けました。長く音楽家をやっていると、人とのつながりが網の目のように広がっていって、いろいろな活動につながっていく。そういった広がりの中で、自分が演奏しながらいろいろな人とコラボレーションする機会が増えていきました。

そういった仕事をする上では、どんな思いがありましたか?

人と仕事をするということは、どんな仕事もそうだけれど「個人技」と「チームワーク」のせめぎ合いだと思うんです。その中では、ときに個人技を引っ込めなければならない場面も少なくありません。チームワークで音楽を作っていく面白さももちろんあるけれど、父の背中を見て感じていたこともあって。父は世間から“谷川俊太郎“と認められ、すごく谷川俊太郎として生きているな、と。その姿を見てきたことで、自分もできれば父のようになってみたいという思いもあったように感じます。

今さまざまな場所で、さまざまな形の演奏やコラボレーションをされていますね。

子どもたちとコラボレーションする仕事も自然と増えてきていて、中でもTOKYO FM少年合唱団との継続的なコラボレーションは、今の僕にとって大きな喜びになっています。自分の書いた曲を、自分の伴奏で子どもたちが歌う瞬間は、毎回純粋な感動が生まれ、鳥肌が立ちます。その縁で、谷川俊太郎の詩に僕が曲をつけて子どもたちが歌うテレビ番組がスタートし、自分自身も楽しみながら見ています。

お父様との演奏活動も数多く行ってこられましたね。

自分で言うのは気恥ずかしいのですが、父とはワン・アンド・オンリーのチームだったと思います。あうんの呼吸で、演奏活動ができていましたから。彼の朗読はそれだけで素晴らしくて、ピアノの音も余計だなと思うことすらありました。でも時々言葉に音楽がつくと、そこだけ色が変わる。そんな瞬間を父は面白がっていましたね。
日常生活においても、父はなんでも面白がる人でした。年をとってから家の前で転ぶことがよくあったのですが、転んだまま動かずにそこにいる。しばらく経って、転んでいる父を見つけた僕が、「大丈夫か?」と心配して駆け寄ると「今、詩が浮かんできた」とか言ってね。車椅子生活で日常が不便になっても、イライラしたり激高したりするようなことは一切なかったです。そんな父と共に活動したことは「いい思い出」。この一言に尽きます。

地元・阿佐谷で続くジャズストリートへの思い

阿佐谷ジャズストリートにはどんな思いがありますか?

阿佐谷というまちに“ジャズストリート“が根付いていることは、とてもありがたいこと。今年で31回目ということで、よくここまで続けてきてくださったと、実行委員・ボランティアの皆さんには感謝の気持ちが大きいです。ステージが終わった翌日に阿佐谷を歩いていると「昨日見にいったよ!」など、まちの人に声をかけてもらえることもある。それは地元のイベントならではのうれしさですね。

今年はどんなステージになるのか、ぜひ教えてください!

今年で5回目の出演。昨年まではJazz for kids(親子で楽しむジャズストリート)の昼間のステージが続きましたが、今年は久しぶりに夜のステージ。久遠キリスト教会で、僕のユニット「もこもこ」に三重県四日市市で子どもの本専門店を営む増田喜昭さんをゲストに迎えて、ジャズと詩のコラボレーションをお届けします。「もういい加減、追悼はやめよう」ということと、「杉並人」としての谷川俊太郎の言葉をテーマに、遊び心満載のステージを作ろうとプログラムを練っている最中。子どもから大人までいろいろな人に来てほしいし、谷川俊太郎の詩の面白さを追悼ではなく「発見」してほしいです。息子の僕でさえ、いまだ発見の途上なくらい本当にたくさんの詩があるので。音楽の面白さ・詩の面白さをどちらも発見して楽しめる。そんなステージを、僕自身もとても楽しみにしています。


阿佐谷ジャズストリート 駅前広場でのライブの様子

阿佐谷ジャズストリート けやき並木がジャズに染まる2日間

谷川さんも出演する阿佐谷ジャズストリート

今年で31回目の阿佐谷ジャズストリート。ディキシーバンドがまちを練り歩き、ジャズの音色をお届けします。
詳細は以下の阿佐谷ジャズストリートホームページをご覧ください。

  • 日程
    10月24日(金曜日)・25日(土曜日)
  • 会場・費用
    パブリック会場:1ステージ2,000円~4,000円(前売り)ほか
    ストリート会場(駅前広場ほか):無料
    バラエティ会場(ライブハウス・カフェほか):店舗によって異なります
  • チケット販売場所
    阿佐谷ジャズストリートホームページ外部サイトへリンク
    区役所1階「コミュかるショップ」ほか
  • 問い合わせ先
    阿佐谷ジャズストリート実行委員会
    電話:050-3529-8700(月~金曜日 午前10時~午後5時)

すぎなみビト MOVIE

「音楽家 谷川賢作さん」【令和7年10月15日】すぎなみビトMOVIE

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広報すぎなみ(令和7年度)10月15日号 第2414号

お問い合わせ先

総務部広報課広報係

〒166-8570 東京都杉並区阿佐谷南1丁目15番1号

電話番号:03-3312-2111

ファクス番号:03-3312-9911

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