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すぎなみビト 絵本作家 スギヤマカナヨ
誰もが楽しめる絵本と笑顔を届けたい
子育て現場で読み継がれるロングセラー絵本から、子どもの心に寄り添う一冊まで、多くの作品を世に送り出している絵本作家・スギヤマカナヨさん。その作品は一般的な絵本にとどまらず、バリアフリー絵本・多言語絵本に及ぶなど多様性に満ちています。そんな絵本作りの背景にある思いなどを伺いました。
目次
絵本がみんなのコミュニケーションツールになればうれしいです

プロフィール:スギヤマカナヨ
昭和42年静岡県三島市生まれ。東京学芸大学初等科美術卒業。
平成3年「ノーダリニッチ島 K・スギャーマ博士の動物図鑑」で絵本作家デビュー。赤ちゃん絵本・児童向け絵本をはじめ、バリアフリー絵本も含む多様な作品を数多く手掛けている。
平成7年より杉並区在住。自著を活用した出張ワークショップ活動も活発。宮前図書館でのワークショップは10年以上続いている。元杉並区子ども読書活動推進委員。
「手で見る学習絵本 テルミ」編集長も務める。
大好きな犬の模写に没頭した子ども時代
子どもの頃はどんなことに興味を持っていましたか?
とにかく犬が大好きでした。ドラマで見た警察犬の訓練士に憧れて自分もなりたいと思い、まず犬のことを知らなければ!と小学4年生から「犬ノート」を作り始めました。
当時、記録に残すには図書館で資料を借りて描き写すしかなかったので、学校の図書館にある犬の本を全部読み、図鑑を見て、内容をひたすらノートに写していました。ノートが3冊目くらいになるともう子どもの本では済まず、公立図書館で生物の専門書を見ながら骨格・体の作りを写すようになりました。
6年生まで作り続けること全6冊。不便ゆえに、ひたすら見て描き写した当時の経験は、今の自分の血肉になっていると感じます。
犬に夢中だった子ども時代を経て美術の道へ進んだのはなぜですか?
しばらくは本気で犬の訓練士を目指していたけれど、実際に進路を決めるに当たってどうすればいいのか悩んでいたとき、先生・親から、大学へ行って見聞を広げてから訓練士になっても遅くはないんじゃないかとアドバイスされ、そうしてみようと思いました。
じゃあ大学で何を学ぼう?と考えたとき、犬の次に好きなのは「絵」だった。そこで東京学芸大学の美術科へ進学しました。
絵本作家としての活動。バリアフリー絵本について
絵本作家になろうと思ったのは学生時代のことですか?
原点は学生時代にあるかもしれません。大学では教育実習が必須だったのですが、ちょうどその頃は創作がすごく楽しくなっていた時期でもありました。教育実習が始まると忙しくて創作時間がなくなってしまったので、創作への気持ちを学校教材にぶつけるしかなくて、とにかくたくさんの教材を自分で作ったんです。
その教材で授業をすると、子どもたちがすごく喜んでくれて、自分が作ったもので人を喜ばせるような仕事ができたらいいなと感じました。同時に、いろいろな子どもと接しながら子どもを応援する大人でいたいとも感じました。このときの経験が絵本を作る自分の出発点だと思います。
実際に絵本作家としてデビューしたのはどんなきっかけでしたか?
大学の卒業制作で「ノーダリニッチ島 K・スギャーマ博士の動物図鑑」という絵本を制作し、それが銀座にある文房具店に展示されたときに出版プロデューサーの目にとまり、声を掛けてもらったのがきっかけです。
35年前にこの作品でデビューし、その後さまざまな絵本を手掛けてきました。基本にあるのはずっと、面白いものを作りたいという気持ち。その上で、長く作品づくりに向き合う中でさまざまな仕様の本にも挑戦してきました。
作品には障害の有無に関わらず、誰もが楽しめるバリアフリー絵本もたくさんあります。どんなきっかけで手掛けることになったのですか?
40年以上続く視覚障害のある子どもが手で触って読める「テルミ」という学習絵本の編集長を、2019年に引き継いだことが、バリアフリー絵本を手掛けることになった始まりです。
「テルミ」は点字だけでなく、絵も交えて構成されるのが特徴です。UVライトを照射すると硬化する特殊な透明のインクで絵を印刷するので、触感が生まれ、描かれたものの形を触察できるようになります。
でも、一般的なイラストをそのまま触れるようにするだけでは、見えない人に正しい情報は伝わりません。そこがとても難しい。制作過程では、当事者の方たちに意見を聞きながら一緒に作っていきます。
ろう者に向けた手話絵本・多言語絵本も手掛けていらっしゃいますね。
手話絵本を制作したのは、ろう者に「目が見えるなら読めているだろうと思われるので、自分たちのために作られた本は一つもない」と言われたことに衝撃を受けたのがきっかけです。
それならばと作った絵本が「みんなであいうえお」。ひらがな・カタカナのほか、口の形・手話の指文字・点字などを表記しているので、聞こえる人も聞こえない人もみんなで読めます。みんなで何かを読もう!となったときに、自分だけがその輪に入れない、分からない、と疎外感を感じることができるだけなくなるといいなと思い、バリアフリー絵本に取り組んでいます。9言語で読める多言語絵本「いち にの さん!」もその視点で作っています。
コミュニケーション、ワークショップ。絵本の可能性
スギヤマさんの絵本は、読む以外の楽しみ方があるのも面白いです。
私は、絵本というのはコミュニケーションツールだと思っています。絵本が知らず知らずの間にコミュニケーションを図れる道具になっているといいなと思うんです。
読みながら赤ちゃんをゆらゆらしたりぎゅっとしたりできる絵本や、子どもと向かい合って読める絵本もいいなと思って、ページを上下に開いて双方向から楽しめる絵本「いっしょにごはん」も作りました。こうした絵本は、読みながらコミュニケーションが生まれます。
絵本をツールにという点では、絵本を使ったワークショップも積極的に行っていますね。
絵本を使って、いろいろな方向からものごとを考えられるような体験ができるといいなと思って、区内の小学校・図書館などさまざまな場所でワークショップ活動を行っています。
森絵都さんと共作した「ぼくだけのこと」という本を使ったワークショップでは、この絵本を読んだ後、子どもたちに自分自身を紹介するワークシートを書いてもらいます。できあがったみんなのワークシートを読んでいくと、共通点はあるけれど、一つとして同じ人はいないと分かる。
そのとき私はいつも「かけがえのない」という言葉を覚えよう、と子どもたちに伝えます。かけがえのないというのは代わりがいない、つまりとっても大切な存在ということ。誰からも差別されたり意地悪されたりしてはいけない存在なんだよ、と伝えるようにしています。
スギヤマさんが考える絵本の可能性とは?
やっぱり「つなぐ・つながる」ということかな。絵本を開けば、その中にきっと自分につながる何かが見つかって、そこからまた違う扉が開いていく。新しい世界につながるきっかけが、絵本にはあると思うんです。
よく「絵本の力」と表現されるけれど、それは手に取って開いてもらい、読む人が感じてくれて初めて引き出される力だと感じています。だからこそ、たくさんの絵本に出会い、手に取って開いてほしい。それが絵本作家としての願いです。
スギヤマカナヨさんの絵本の世界

- 「ノーダリニッチ島 K・スギャーマ博士の動物図鑑」(絵本館)
- 「ぼくだけのこと」著・森絵都(偕成社)
- 「いっしょにごはん」(くもん出版)

- 「てんじつきさわるえほん ぼうけんしよう!」(偕成社)
- 「みんなであいうえお」(あすなろ書房)

- 「いち にの さん!」(童心社)
- 「おかあさん、すごい!」(赤ちゃんとママ社)


すぎなみビト MOVIE
「絵本作家 スギヤマカナヨさん」【令和8年5月15日】すぎなみビトMOVIE