区立堀之内小学校における芝生養生シートの放射能問題について

 

ページ番号1018798  更新日 令和2年10月5日 印刷 

区立堀之内小学校において使用していた芝生養生シートから高濃度の放射性物質が検出されたことについて、事実経過と区の考えを整理いたしましたので、お知らせいたします。

1 事実経過

(1) 学校保護者の方からの通報

平成23年11月2日、区立堀之内小学校の保護者の方から、「学校内の放射線量を測定したところ、芝生の養生シートから高い線量が測定されたので、区で調べてほしい。」との主旨の連絡を区は受けました。

(2) 区による空間放射線量率測定とシートの撤去

平成23年11月2日夕方、学校内体育館の軒下に保管してあった芝生の養生シートを、区が空間放射線量率を測定したところ、シートから1メートルの高さで1時間あたり1.13マイクロシーベルト(1センチメートル高で3.95マイクロシーベルト)を検出しました。1マイクロシーベルトを超える数値が出たため、区はこのことを直ちに文部科学省に報告するとともに、公表しました。
なお、シートを撤去し再度測定を行ったところ、地上高1メートル で1時間あたり0.09マイクロシーベルトに下がりました。
撤去したシートは、区内の区施設に移し、施錠して保管しています。

(3) 他の学校の芝生養生シートの測定

平成23年11月4日、区立堀之内小学校での測定結果を受けて、区は、同様に校庭が芝生となっている20校について調査・測定を行いました。
その結果、シートから1メートルの高さで1時間あたり0.06~0.88マイクロシーベルト(1センチメートル高で0.07~3.60マイクロシーベルト)を検出しました。国において除染を行う方針が示されている、地上1メートルにおいて1時間あたり1マイクロシーベルト以上となった学校はありませんでした。
これらのうち、シートから1センチメートル高で1時間あたり1マイクロシーベルトを超えた7校のシートについては、倉庫に保管し、土のうによる放射線の遮蔽を行いました。

(4) 国からの指示と回答

(2)の区の報告に対して文部科学省は、放射線量を下げるために簡易な除染作業を行うよう指示するとともにその結果の報告を求めました。
区は、仮に1時間あたり1マイクロシーベルト以下に下げられたとしても、汚染されたシートを今後は使えないと判断し、平成23年11月10日に、廃棄物としての排出について環境省に相談しました。廃棄物について放射能の基準は、排出時点でのものはありませんが、焼却灰の処理基準ではセシウム濃度で8,000ベクレル/キログラム以下としています。環境省は、これを準用し、セシウム濃度が8,000ベクレル/キログラム以下であれば安全に処理することが可能であると回答しました。

(5) シートの詳細測定その1(広げて測ると大幅に低下)

その後、区は、シートのより詳細なデータを確認しようといくつかの方法で測定しました。結果、シートは使用時のように広げて測ると、1メートルの高さで1時間あたり0.07マイクロシーベルトとほぼ周辺空間と同程度の線量しかないことが確認できました(1センチメートルの高さで1時間あたり0.10マイクロシーベルト)。シートは、畳んで重ねられていたことで放射性物質が集積した場合と同様の状態が作り出された結果、高線量が測定されたことが明らかになりました。
また、シートからサンプルを取って、文部科学省からの指示のもとに簡易除染を行いましたが、素地が網目状で放射性物質が離れにくいため、1センチメートル高で1時間あたり0.15マイクロシーベルトから0.13マイクロシーベルトにしか下がりませんでした(平成23年11月18日)。

(6) シートの詳細測定その2(シートから90,600ベクレル/キログラムを検出)

区は、あわせてシートの素地自体にどのくらいの濃度の放射能が付着しているのかを測定しました。その結果は、空間線量で低い数値が測定されたのに反し、セシウム134と137の合計で90,600ベクレル/キログラムと処理基準を大きく上回る高い数値が確認されました(平成23年11月25日に速報値が出された後、平成23年12月6日に確定)。

(7) 環境省へ公文書による照会と回答

シートを広げれば放射線量が大幅に下がる一方で、素地の放射能濃度が高い結果が出たことを受けて、区は環境省あてにシートの処分等について公文書により照会しました(平成23年12月5日)。
これに対して、環境省からは、平成23年12月12日に、「他の廃棄物と十分混合することで焼却処理が可能と考えられます。その際、焼却灰が通常通り埋め立てられる8,000ベクレル/キログラム以下とすることが望ましいと考えられます。」などの回答を受けました。

(8) シートの保管

区内施設及び7校に保管していた8校分のシートについては、それぞれの保管場所から撤去し、区役所地下倉庫内に土嚢や鉛で設備を整えて、施錠・保管しています。
なお、これらのシートについては、「放射性物質汚染対処特別措置法」(平成24年1月1日施行)の規定に基づき、指定廃棄物の指定を環境省に平成24年3月30日に申請(平成24年4月4日接受)し、令和2年6月30日に指定されました。

2 区の考え

(1) なぜ90,600ベクレル/キログラムという数値が出たか

芝生養生シートは、表面積が広い一方で軽いものです。1キログラムあたりで換算すると表面積が12平方メートルにもなります。一方、土壌の場合は、1キログラムに相当する表面積は、一般的に放射能濃度の測定に用いられる深さ5センチメートルで計算すると、0.0154平方メートルに過ぎません(土壌の密度を1.3グラム/立方センチメートルと仮定)。この芝生養生シートの空間放射線量率は、広げて測ったときに、1メートルの高さで1時間あたり0.07マイクロシーベルトとほぼ周辺空間と同程度の線量しかありませんでした(1センチメートルの高さで1時間あたり0.10マイクロシーベルト)。
こうしたことから、同じ1キログラムであっても広い面積の放射性物質を測定することになることから、数値が高いものとなったと考えています。

(2) 子どもたちへの影響はあるか

芝生養生シートを撤去するまでの間、シートの上で遊んでいた児童がいたので、健康への影響を心配されるお問い合わせをいただきました。
放射線の影響には、その場に居ることによって受ける外部被曝と、ほこりや食物などが体内に入ったことで受ける内部被曝があります。
外部被曝については、シートの上、1メートルで測定した結果が1時間あたり1.13マイクロシーベルトでした。国のガイドラインとしての一般市民の年間線量限度は、1ミリシーベルトとされていますが、1マイクロシーベルトは1ミリシーベルトの1千分の1です。どれだけの時間シートの上にいれば1ミリシーベルトを超えるかを計算しますと、885時間以上ということになります。
内部被曝については、この間、区でシートを洗うことで除染に努めましたが、シートが網目状のため放射性物質の付着度が強く、放射線量はほとんど下がりませんでした。こうしたことから、シートの上では遊ぶことでほこりが舞ったとしても、放射性物質が舞う量はかなり少なかったものと考えております。
以上から、シート上で遊ぶことがあったとしても、健康への影響はないものと考えております。

(3) シートは焼却処分するのか

芝生養生シートについては、堀之内小学校を含め、シートから1センチメートル高で1時間あたり1マイクロシーベルトを超えた学校が8校ありました。これらのシートについては、今後は使用せず処分していく考えです。
シートの処分等について環境省に照会したところ、平成23年12月12日に、「他の廃棄物と十分混合することで焼却処理が可能と考えられます。その際、焼却灰が通常通り埋め立てられる8,000ベクレル/キログラム以下とすることが望ましいと考えられます。」との回答を受けました。その後、平成24年3月30日に「放射性物質汚染対処特別措置法」の規定に基づく指定廃棄物の指定を申請し、令和2年6月30日に指定されました。なお、この指定廃棄物は具体的処理方法が整った段階で、国により処分されます。

3 堀之内小学校の芝生養生シートの概要、測定結果と環境省への照会内容

(1)シートの素材・形状

a 素材 ポリエチレン(いわゆるスポーツターフカバー。形状は網目状)
b 重さ 1平方メートルあたり約80グラム
c 状況 芝生の校庭1,892平方メートルを9枚のシートで覆っている。
 (シートの大きさは5メートル×12メートルから16.5メートル×24メートルまで数種類あり)

(2) シートの使用状況

a シートは、校庭に張った芝生を保護するために、夜間や冬季に校庭全体を覆うようにかけて使用している。
b 原発事故直後の平成23年3月中・下旬の降雨の際にも使用していたこと、また、使用していないときも通年、屋外(体育館軒下)で保管していたことから、放射性物質が付着したものと考えられる。

(3) シートの放射線量測定結果

a 保管状態(9枚重ね)のままで測定(平成23年11月2日)
シート上1センチメートルの高さ シート上1メートルの高さ シート横1メートル・
地上1センチメートルの高さ
3.95マイクロシーベルト/時 1.13マイクロシーベルト/時 0.32マイクロシーベルト/時

(測定機種:日立アロカ社製 TCS-172B。以下、「(3)‐d」を除き同様。)

b 9枚のうちの1枚を抽出して再測定(平成23年11月18日)
シートの状態  シート上1センチメートルの高さ シート上1メートルの高さ
シート1枚を畳んで測定 0.61マイクロシーベルト/時 0.11マイクロシーベルト/時
シート1枚を広げて測定 0.10マイクロシーベルト/時 0.07マイクロシーベルト/時
  • シートの大きさ 5メートル×12メートル=60平方メートル
  • シートの重さ 約5キログラム
c 1枚のシートから検査サンプルを切り取って洗浄による除染効果を測定(平成23年11月18日)
シートの状態  シート上1センチメートルの高さ
洗浄前              0.15マイクロシーベルト/時
洗浄後 0.13マイクロシーベルト/時
d 1枚のシートから検査サンプル(約20センチメートル×80センチメートル)を切り取って放射能濃度を測定
放射性ヨウ素 放射性セシウム134 放射性セシウム137
検出限界以下 40,600ベクレル/キログラム 50,000ベクレル/キログラム

(測定方法;高純度ゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線スペクトル法)

(4)測定結果から見た特殊事情

a 「(3)‐b」のシートについて、畳み重ねて測定すると、放射線量が高まる。

  • 畳み重ねて測定すると 1.13マイクロシーベルト/時(シート上1メートル高)(平成23年11月2日測定)
  • 広げて測定すると0.07マイクロシーベルト/時(シート上1メートル高)(平成23年11月18日測定)

b 軽量だが表面積が大きいため、土などに比べ放射能濃度が高く測定されます。

  • 1キログラムあたりの表面積は、約12平方メートル

c シートは網目状のため、放射性物質が付きやすい一方、除去しにくくなっています。

  • 20センチメートル×80センチメートルのサンプルを洗浄(デッキブラシ洗浄後揉み洗い)しても、0.15マイクロシーベルト/時から0.13マイクロシーベルト/時に低下のみでした。

(5)環境省への照会内容

a 発泡スチロールやビニールシートのように、軽いのに表面積が広いものについても、処分の規制値は8,000ベクレル/キログラムとなるのか。
b 今回の本区の芝生養生シートのようなケースについては、どのように処分すればよいのか。
c 仮に処分することができないとした場合、こうした廃棄物は国の責任で処分すべきものかと考えるが、区にいつまで保管させるお考えなのか。

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