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すぎなみビト 東京2025デフリンピック日本代表 デフビーチバレーボール選手 伊藤 碧紀 デフ卓球選手 亀澤 理穂
“デフスポーツ”の世界頂上決戦が東京で!
耳がきこえない・きこえにくいアスリートが、熱く競い合うデフスポーツ。音のない世界で選手が見せる高い技術・集中力には目を見張るものがあります。そんなデフスポーツの国際大会・デフリンピックが、11月に東京で開幕。区内在住の日本代表選手・伊藤碧紀さん、亀澤理穂さんに大会への意気込みなどを伺いました。
目次
デフリンピックとは
耳がきこえない・きこえにくいアスリートのための国際スポーツ大会のことで、国際ろう者スボーツ委員会(ICSD)の主催で4年ごとに開催されます。参加資格は、補聴器などを外した状態で普通の会話程度の音(55dB以下)がきこえないことです。競技中は補聴器などの使用が禁止され国際手話・スタートランプ・旗など、視覚情報を活用したコミュニケーションが特徴です。
左:東京2025デフリンピック日本代表 デフビーチバレーボール選手 伊藤 碧紀(いとう たまき)選手
右:東京2025デフリンピック日本代表 デフ卓球選手 亀澤 理穂(かめざわ りほ)選手
舞い上がる砂埃、選手の熱量。
その臨場感をぜひ味わってほしいです
プロフィール:伊藤 碧紀(いとう たまき)
平成16年杉並区生まれ。都立中央ろう学校卒業。大東文化大学在学中。中学生のときにバレーボール部に入部し、その後ビーチバレーボールも始める。高校時代の同級生・堀花梨選手とペアを組み、全日本デフビーチバレーボール選手権2023年、2024年大会ともに優勝。東京2025デフリンピックでもメダル獲得を目指す。
音のない世界で選手が見せる集中力、コミュニケーションに注目を!
プロフィール:亀澤 理穂(かめざわ りほ)
平成2年杉並区生まれ。日本聾話(ろうわ)学校卒業。卓球経験者の両親の影響で小学1年生のときから卓球を始める。全国ろうあ者卓球選手権大会、世界選手権大会ほか、デフ卓球の主要大会で成績を残す。デフリンピックは初出場の台北2009大会以降、4大会に出場し8個のメダルを獲得。令和4年度杉並区スポーツ特別栄誉章受章。東京2025デフリンピックでは初の金メダル獲得を目指す。
【インタビュー】伊藤 碧紀選手
ビーチバレーボールを始めたきっかけを教えてください。
もともと中学校の部活でバレーボールをやっていて、部活を引退した中学3年生の冬に母に連れられてビーチバレーのクラブに体験に行ったのがビーチバレーとの出会い。「こんなスポーツがあるんだ」と初めて知りました。
私は先天性の難聴で、程度は比較的軽め。女性の声は聞き取りやすく、コーチが女性だったこともあり、特に音で困ることはなくプレーできました。足の強さには自信があり、動きにくい砂の上でも走るのは余裕だったけれど、ジャンプするのは大変で…!
練習を重ねるうちにビーチバレーの魅力にはまっていきました。
高校ではバレーとビーチバレーを両立されていたそうですね。
高校でもバレ一部に入部し、同時にビーチバレーのクラブも継続して、高校3年間はとにかくバレー漬けの毎日でしたね。バレーで身に付く基本の技術はビーチバレーにも応用できますが、ビーチバレーで求められる特徴的な技術もたくさんあるので、それらを習得して磨いていく必要がある。大学進学以降はビーチバレーに絞って取り組むことにしました。
ペアを組む堀花梨選手は高校時代の同級生だとか。
彼女も同じバレ一部でした。私から「ビーチバレーを一緒にやってみない?」と誘ったら、「うん、オッケー」という感じで即決してくれて(笑)。それから二人で練習を重ねていきました。目指せる大会は全て目指そう、世界選手権やデフリンピックなどに全部出よう!と花梨と話してきたので、今回のデフリンピック出場は一つの目標がやっと叶ったという感覚です。全力でメダルを取りに行こうと思います。
デフビーチバレーはどのような競技ですか?
笛の代わりにネットを揺らすことで判定を伝えるといったこと以外は、ビーチバレーと同じです。コミュニケーションは基本的に手話。プレー中にボールが動いているときは手話ができないので、大きな声で叫ぶこともあります。私は補聴器を外していても、「上!」など大きな声で言われればある程度聞こえます。一方、聞き取るのが難しい花梨に対しては、大きな身振りで「あっち!」とか、そんなふうにコミュニケーションを取ることも多いです。
競技のどんなところに注目して見てほしいですか?
ポイントは二つあって、まず一つは、動きにくい砂浜で選手が素早く移動する動きと、その力強さ。砂浜でのジャンプはすごく筋肉が必要なので、選手の筋肉美もぜひ見てほしいです。もう一つは、選手の頭の使い方。相手がどう動くのか、風の向きでボールがどう飛ぶのかなど、全てを頭の中で読みながら計算して得点を狙っているので、戦略にも注目してみてください。ビーチバレーはコートと観客席がとても近いので、選手の表情までよく見えるのがいいところ。自分ならこっちに動くかな?とか、距離が近いからこそ想像しながら観戦すると、とても楽しめると思います。
最後に、区民の皆さんに向けてメッセージをお願いします。
ビーチパレーはすごく運動量の多い競技で、プレイヤーが2人しかいない中でラリーを交わして戦わなければなりません。その必死さだったり、舞い上がる砂埃だったりを間近で感じていただけたら、きっと感動してもらえるのではないかと思います。ぜひ会場に来て、私たちの熱量を感じてほしいです!
【インタビュー】亀澤 理穂選手
卓球を始めたきっかけを教えてください。
生後10 カ月で先天性の難聴だと分かり、障害の程度はどちらかというと重い方ですが、そんな中でも小さい頃から体を動かすのが好きで、いろんなスポーツをやってきました。その一つが卓球です。
デフリンピックを目指したきっかけは、中学1年生のときに参加したデフ卓球の合宿で、デフリンピック金メダリストの方の講演を聞いたこと。自分も出てみたいと憧れて、卓球に取り組む姿勢が変わりました。そして中学3年生で出場したデフ卓球の全国大会で、3位になったことが自信になり、「私もデフリンピックに出る!」と明確に日本代表を目指すようになりました。
その後、有言実行でデフリンピックに出場し、初めての大会で銀·銅2つのメダルを獲得されましたね。
目標としてきたデフリンピックの表彰台で日の丸が上がったときは本当に鳥肌が立ちました。以降、デフリンピックには4大会連続出場しましたが、金メダルには手が届いていません。今回は、その「忘れ物」を取りに行く大会だと強く思っています。
また、娘が生まれてからは「娘に金メダルをかけてあげたい!」という思いも原動力の一つです。これまでのどの大会よりも他の選手のレベルが高く、ハードな戦いになるといわれていますが、精一杯戦います。
デフ卓球はどのような競技ですか?
基本的なルールは卓球と同じで、音のない状態でプレーするという違いだけです。卓球はボールがテーブルで弾む音・回転する音など、さまざまな音を頼りにプレーする面も大きい競技。デフ卓球の場合はそれができないので、ボールをしっかりと見て、体のリズムを使ってプレーしなければなりません。
また、音でボールの行き先を判断できないため、打ったボールがどこに飛んだかを見届ける必要があり、そんな意味では、集中力の持ち方が違ってくるのかなと思います。
他にも選手同士のコミュニケーションもデフならでは。手話で作戦を話し合うと他国の相手チームで日本の手話が分かる人がいるかもしれないので、テーブルの下で見えないように手話をします。口話を訓練している人も多いので、口の動きを読まれないようにラケットで口元を隠すのも欠かせません。
デフ卓球の魅力や注目ポイントをぜひ教えてください。
観戦の際には、音のない世界での集中力のすごさを感じてほしいです。特に目の動きに注目すると、どれだけ集中しているのかきっと伝わると思います。また、選手、監督・コーチ、手話通訳者の間で交わされるコミュニケーションの方法にもぜひご注目ください。団体戦では、手話・拍手・手を使ったアクションなどチームメートを応援する方法もさまざまあるので、見ていて興味深いと思います。
東京でデフリンピックが開催されることにはどんな思いがありますか?
身近な場所でデフスポーツの世界大会が開催されるチャンスはなかなかないので、神様からの贈り物だと思って、非常に楽しみにしています。今大会を通してデフリンピックの知名度が上がり、デフスポーツヘの支援につながっていくことに期待しています。そして、聴覚障害者への理解が深まり、社会が良いかたちに変化していくきっかけになればうれしいです。また、情報保障(注)も今はかなり充実してきましたが、さらに整えられてさまざまな方法が備わっていくことにも期待しています。実際に会場に来ていただくことで気づきや発見もきっと得られるはず。会場での応援をお待ちしています!
(注)障害者への情報提供の方法。聴覚障害の場合、手話通訳者の配置などがある。
みんなで応援しよう!東京2025デフリンピック
東京2025デフリンピック大会エンブレム
日本で初開催となる「東京2025デフリンピック」は、第1回パリ大会から100周年の記念となる大会です。
70~80カ国・地域から21競技に約3000人もの選手が参加します。音のない世界で輝く選手を応援して、一緒に大会を盛り上げましょう!
- 開催期間
11月15日(土曜日)~26日(水曜日) - 場所
東京体育館、大森ふるさとの浜辺公園 ほか - 詳細
すぎなみビトMOVIE
みんなで応援!東京2025デフリンピック【令和7年9月1日号】すぎなみスタイル
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