ファイナンシャルアドバイザーに聞く 子育て夫婦のマネープラン【基本編・後半】(令和2年12月15日)
令和2年10月15日の記事では、人生を「平野」と「山」に分けて、それぞれできる対策を考えてもらいました。
答えは…「予測できないよね」「対策はムリ」ということでした。
このように正解を予知することはできませんが、今回は、せめてできる大切なこと「落とし穴を知って、大きなミスをなくす」ための基本についてファイナンシャルアドバイザーの加藤理さんへお話を伺ってきました。以下は、加藤理さんのお話です。
対策はムリ?
前回、人生を「平野」と「山」に分けて、それぞれできる対策を考えてもらいました。
答えは…「予測できないよね」「対策はムリ」ということでしたね。
このように正解を予知することはできませんが、今回は、せめてできる大切なこと「落とし穴を知って、大きなミスをなくす」ための基本をお伝えします。
落とし穴を知ることで「人生をギャンブルにしない」
あなたのご家族の人生をプランするときに、どちらが良いでしょうか。
選択肢A:当たれば3億円、ハズレると財産がゼロ
選択肢B:当たってもハズレても、そこそこの財産
後者ではないでしょうか?前者は「ギャンブル」ですね。
お金の人生設計のコツを一言で表すとしたら、「ギャンブルとは真逆を目指す」ことです。
「ギャンブル」つまり「あたりハズレが大きい要素」を残さない事が、確実な人生設計になります。
とはいうものの、人生はおそらく「想定外のこと」が次々と起こります。
自分が子供の頃には起きなかったことが、起きます。
ママ友の家庭では起きていないことが、起きます。
これらをそのまま受けとめていては、人生は疲弊してしまいます。
前回、「未来は予測不可能」だから、あきらめて「未来を決めないことが解決策」と伝えました。
ご注意ください、だからといって「準備しない」のではなく、「柔軟に、準備すべき」ということです。
基本は以下の通りです。
- 大きな失敗をなくす
- 柔軟な体制をとっておく
- 大まかにプランニング
- それを修正していく
想定外のことに対して、柔軟かつ適切な準備があれば、人生はギャンブルになりません。今回はそんな大きなミスを犯さないための「お金の落とし穴」を3つ、ご紹介していきましょう。
落とし穴その1「いつ貯めるんだっけ」
お金って、人生のどの時期に、貯めるべきなのでしょうか。
30年から40年前、私たちの親の世代は、例えば
- 25歳で子供を授かり
- 45歳で子供の成人式
- 子供の自立後は、家計に余裕ができて
- 定年までの15年から20年間で住宅ローン返済、老後資金を貯めた
そんなご夫婦も多かったでしょう。
今はどうでしょうか。例えば
- 35歳で子供を授かり
- 55歳で子供の成人式
- 子供が自立後、家計が少し楽にはなったけど
- 定年までわずか10年程度
- 住宅ローンは結構残っていて
- 老後資金なんて貯める余裕がない
このように私たちは、親世代と比べ「子供が自立後の期間に、余裕がない」というご夫婦も多いのです。
つまり「いつ貯めるんでしょうか」の答えは、「独身の頃、貯めるべきだった」です。
もう独身の時期は、完了してますか? そうですね。
でも、後悔しても始まりません!
今からできる貯金の時期を考えてみましょう。
一般的には「今日から子供が小中学生位まで」ということになります。
そんなの、無理!ただえさえキツイのに!
気持ち、わかります。でも他に方法がないんですよ。
過去に戻ってやり直せるとしても、あの頃の楽しかった消費を我慢して、将来生まれるかどうかわからない子供のためにお金を貯めるでしょうか。
なかなか難しいのではないでしょうか。
やっぱり、仕方がないですね。今、頑張りましょう。
当たり前のことを言いますが、以下のどちらかなのです。
- お金は今使うと、未来には使えない。
- 今とっておくと、未来に使える。
独身の頃、お金を使えたのですから、今は逆にがんばる時、と覚悟をしてしまいましょう。お子さんが小さいうちは、外食を減らしたり、お金を使わず休日を楽しむなど、工夫次第で、意外と節約しやすい時期なんですよ。
独身の友達がいたら、お金を貯めて増やしておくべきことをお勧めしてあげてください。
落とし穴その2「親の真似をしている」
貯金や金利
時代はすっかり変わりました。
例えば、親御さんに言われたことはないですか。
「貯金しておきなさい」「子供が生まれたら学資保険」など。
しかし、あなたのご両親は、金利約7%の時代に子育てをされました。
金利7%って「10年間でお金が倍になる」んですよ!
もしかすると、親御さんはお金の意識が違う可能性があります。
今の金利は限りなく0%。
やるべきことは、20年から40年前と比べ、全く違う行動かもしれません。
「貯金」「保険」「投資」「税金」など、一度立ち止まってよく学ぶ必要がありそうですね。
家を買うかどうか
時代はすっかり変わりました。
例えば、親御さんを参考に「結婚や出産をきっかけに、家を買う」方は意外と多いです。
「今の賃貸物件と同じ月額なら、住宅ローンも払えそう」という事をおっしゃる方がいますが、住宅ローンは超長期です。
お子さんが生まれてまもない頃、子育て期間内でもかなり出費の少ない「平野」の時期に、判断していませんか。
20年から40年前と比べ例えば「リビング学習」などで子供部屋が必要な時期は限られているかもしれませんし、「子供が家を継がない」等の変化もあります。
さらには、新型コロナの話を出すまでもなく、この先10年で、どの場所からでも仕事ができる時代になる可能性も十分あります。
そもそも家を今の場所に購入すべきか、というところから、検討が必要かもしれません。
学校も大きく変化
時代はすっかり変わりました。
各学校は、ご自身が子供の頃とは、かなり変わっています。
杉並区の子供たちは約3割程度が私立中学に進学しますが、家族にとっても金銭面に限らず、大きな影響を与えます。
以前とは違う価値観で、学校を選ぶ必要があるかもしれません。
近年、学校は毎年大きく変化をしています。
多くの学校は(お子さんを連れていかなくも)学校を見学させてもらえます。
お金の問題ももちろん、それ以前に価値を感じられるかどうか、思い込みや噂の情報ではなく、実際に見に行ってみるのも一つの方法です。
20年から40年前には当たり前だったことが、今は当たり前ではないかもしれない。
親御さんの意見に耳を傾ける必要はありますが、そのまま真似をしていないか、気をつけて自分の行動を観察してみてください。
落とし穴その3「専門家に任せっきり」
かくいう私も、お金の専門家なのですが、「専門家」に任せっきりになっていませんか。
近年「ファイナンシャルプランナーの人に言われたから」とおっしゃるお客様が増えています。
欧米ではファイナンシャルアドバイザーに相談するのはごく自然なことで、文化が根づいていますが、日本でも、お金のことを専門家に聞ける風潮になってきたこと、それはとても望ましいことです。
かといって、あなたの価値観や、あなたのご家族の人生について、誰より詳しいのはあなた自身です。また、長い人生を間違いなく一緒に歩んでくれるのも、あなた自身です。
前回お伝えした通り、お子さんの学費など、その時期にならないとわからないことが多くあります。
その都度、専門家に相談できれば、もちろん素晴らしいことですが、有能な専門家ほど、忙しく、コストもかかります。
逆に忙しくない専門家は、頼りないものです。
だとしたら、残るは自分です。自分である程度判断できる工夫をしましょう。
最低でも一年に一回くらいは家計を見直して、考え方を夫婦や家族で話し合えるのが理想です。
「今は100点の家計。でも徐々に現実とずれていく」のは理想的ではありません。
それよりも「80点位でも、常にメンテナンスしてある家計」の方が、正解ではないでしょうか。
1度や2度の専門家との相談よりも、常にご夫婦やご家族で、家計状況や価値観を共有して見直していくことが、何十倍も価値があります。
そのための基礎知識や方法は、専門家に学んだほうが早いかもしれません。
専門家からは、その瞬間の解決策を教えてもらうことも良いですが、長きにわたって使える「考え方」を学ぶのに利用することをお勧めします。
もし「専門家に任せっきり」にしたいなら、有能な専門家と、年に最低1回は面談して、見直す必要があります。
最後に
予測不可能とはいえ、おおよその「ゴール」を決めておくことをお勧めします。
多くの方は「ゴール」の設定がないため、不安に駆られてお金を稼いだり、貯めたりしています。
想像してみてください。「仕事で一大プロジェクトを任された、だけどプロジェクトのゴールが曖昧」。これって、とても困りませんか?
「◯月◯日までに◯◯して」という「ゴール」を示されたら、わかりやすいですよね。
人生も同じです。
人生って「プロジェクト」みたいなものではないでしょうか。
前回ご紹介した「平地」と「山」に分けて、おおよその「ゴール」を設定し、年に一回程度は見直していくと、未来への道筋が見えてきます。
そして設定した道筋から大きく外れないために、落とし穴に注意する。
これで人生設計が「ギャンブル」ではなく、無難確実で、安心なものになっていきます。
前回・今回と、抽象的な話と感じられたかと思いますが、具体的な数字を検討する以前に、この考え方を意識するのとしないのとでは、結果が大きく変わります。
これが人生のお金の問題を解決する、第一歩です。一緒に解決していきましょう!
紹介:加藤 理(かとう あや)
国の年金が大好き、さらに投資で老後が安泰 という、珍しいファイナンシャルアドバイザー。
「ツラくない」節約・投資をテーマに年間150回以上のセミナーで講義をしています。
すぎラボライター ひなたぼっこ
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